私の彼氏
三木真由美

1

三木真由美は、M市立芸術大学美術学部の講師である。

毎朝、二時間をかけ大学まで電車で通勤をする。

半年前に、夫を事故で亡くし、二人の息子を食わせるために、懸命に働いているのだ。

彼女の悩みは通勤時間の長さであった。

片道二時間、一日四時間も電車に揺られなければならないのである。

どのように時間をつぶそう?

何かを読もうか?

しかし、毎日、雑誌を買えるほど、三木家には余裕はない。

彼女のカバンには、いつもテキストである分厚い『傑作デザイン集(三)』が入っているだけだ。

何もせずにいると、亡くした旦那のことを思いだして、泣いてしまいそうになる。

< 1 / 206 >

この作品をシェア

pagetop