Loving Expression ~愛を詩にのせて送ろう~
「お前………なんでそんなに強かったのに、俺が殴った時やりかえさなかったんだよ………」
沈黙に耐えきれず、夏目は息切れ切れで言葉を発した。
彼は何も言わず、ヘッドフォンをかけなおした。
「おいなんか言えって………」
「殴り返す意味がなかったから」
淡々と彼は答えた。
「君が彼女を想う気持ちは僕を殴るのに値する。生半可な思いで彼女に惚れた僕を殴る権利は君にはあった。そんな君を殴る権利はあの男にはなかった」
それだけだ、と大粒の眼を一切そむけずに言い切った。
詩的表現が上手い男だな、と夏目は感心した。
「………作詞家ってのは腕力がつく仕事なのか?そんな風には思えなかったぜ」
皮肉交じりにそう吐きだした。