朱音空
タイトル未編集

朱音と言の葉


春の暖かさを纏っている風を浴びながら見上げるは、朱音色の空。
 ずっと遠くまでも続くその空に、私は小さな溜息を零した。
「……約、一ヶ月」
高校に入学してから、約一ヶ月が経ったこの五月の中旬。私は未だに『独り』だった。
 別にハブられているとか、いじめを受けているわけでもない。ただ、『独り』なのだ。
入学式の次の日くらいは皆、緊張していて中々話そうとはしない。だが、一週間も経てばグループというものが形成されるらしい。
 私は、クラスにできたその何処にも所属していない。そんな私を誘ってくれる人もいない。
 でも、その理由は私自身、分かりきっている事だ。私は、面倒なのだ。グループとか友達とか。だから別に居なくても、『独り』でも寂しくもつまらないとも思わない。
「なんて便利なんだ……私の脳」
と、なんとなく呟いてはすたすたと帰り道を歩く。


 ―見上げれば、朱音色。何処までも続く、紅い空。―
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