魔界動乱期
ウルフ一魔一魔がおびただしい数のカマイタチを放ち、合わせて数千の刃がアバル軍を襲う。
カマイタチがアバル軍に届くか届かないか、という瞬間であった。

突然巨大な砂の塊が現れ、真空の刃を全て防いだのである。
見張りのウルフを指揮していた副リーダーのガイは、驚きの声をあげた。

「砂の能力者か!?とんでもない魔力だ…!」

そしてアバル軍からも声が上がった。

「分かれて一気に進め!!」

あっという間にアバル軍は百ずつの編隊に分かれ、四方八方から森への侵入を開始した。
総勢約十万のアバル軍を前にして、ガイと五百魔のウルフ達は覚悟を決める。

見張りのウルフ達の役目は、複数ある森への侵入経路のうち、一路だけを死守することだった。
この一路は、森の‘正面口'とでも言うべきもので、ここを突破されればアバル軍が一気に森へなだれ込む。

この一点を重点的に守る事により、アバル軍を分散させ、違う経路に向かわせる事がウルフ達の重要な役割である。

ウルフ達は、風の刃とスピードを駆使した撹乱戦法で、アバル軍の侵入を防ぐ。
やがてアバル軍は、後方に大軍を詰まらせ、百魔ずつの各編隊はうまく散らばりを見せていた。

ある程度、アバル軍が散らばったところで、適当にここを突破させる。
その繰り返しである。
何にせよ、先頭の陣はアバル軍の大軍を相手にしなければならない。

ラウドは、「決して無理はするな」とガイに言い聞かせていた。
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