魔界動乱期
この赤子から、ラウドは昔の自分を連想した。
ラウドも自分の親に会った事がない。
自分を拾い、育ててくれたのは故ギルシャス王だった。

「家族というものに縁のなかった私に、神様が遣わしてくれたのかもな」

そしてラウドは赤子を抱きかかえ立ち上がり、空に向かって叫んだ。

「この子の親よ、安心してくれ!私がこの子をきっと立派な魔族に育てて見せよう!」

ラウドの決意に、からかい気味だったルークも優しく微笑む。

「ラウド、まずは名前を決めないとな」

「うむ、ちゃんとした名前があると思うが……」

ラウドは名前の手がかりがないかと、赤子の体を見回した。
そのとき、閉じていた赤子の目が、カッと開いた。


【我が名は……ジード・エルナーク……!】


「なんと……!」

言葉を話せないと思われた赤子が、突如口を開いたのだ。
その声は赤子と思えないほど低く、ラウドとルークの腹の底へと響きわたった。

「ジード……エルナーク………」
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