ブラッディマリー
 


「し、俊さん、何言ってるの!? 和が、和が……」


「すごい血の匂いだよなぁ。本能我慢しながら恐怖に耐えるのは大変だろ、万里亜ちゃん」



 びくり、と万里亜は身体を震わせた。



「……俊、さ……ん……?」


「大丈夫。和はまだ生きてるよ。……今のところはね」



 俊輔に取られた万里亜の腕が、かたかたと震える。


 それは、瀕死の和の命の火が消えそうなことへの恐怖か、目の前の未知なるものへの恐怖か。



 自分でも判らないまま、万里亜は俊輔から目をそらせずにいた。


 そんな万里亜の恐怖を正面から柔らかく受け止め、俊輔は動かない和を振り返った。

.
< 150 / 381 >

この作品をシェア

pagetop