ブラッディマリー
 




「……血を吸えるようになった、ということだな。だから儂にその理由を訊きに来た」





 和は一歩足を踏み出すと、敬吾を見下ろすように立った。



「ああ。何故だ? あんた、何を企んでいる?」


「……ふ。才色兼備のヴァンパイア相手に、儂が何を企めると言うんだ。儂が騙くらかすのは、腹の腐った人間だけだよ」


「あんただってそうだろうよ」


「な、和」



 行き場の判らない怒りと疑問の塊が今にも牙となって噴き出しそうな和の気配。


 それを感じ、万里亜は和の背に触れた。



「白城のお嬢さん、構わんよ。こいつに喰らわれるなら、本望だ」



 困り果てる万里亜に、敬吾は眉尻を下げて笑う。和はそれにも顔色を変えた。

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