ブラッディマリー
 

 万里亜の心がどうにかなってしまった瞬間を探して、そこから彼女を連れ出してしまえるのに。


 直系であり、純血のヴァンパイアである俊輔にだって、そんなことは出来やしない。


 無意識に俊輔に助けを求める自分に気付いて、和はふいに泣きそうになった。



 ──こうして誰かに縋ることしかできないのか、俺は。



 6年前だってそうだ。敬吾のせいにし、尚美のせいにし、自分を責めた。母の哀しみに気付こうともしなかった自分を、過ちの連鎖で覆い隠して。


 そしてまた自分は、17歳の少女たったひとりさえ救えず、こうして突っ立っている。


 痛め付けられるだけの人生に、何の意味があるのだろう。自分よりずっと長く深くそれを味わってきた万里亜が、終わることに救いを見出だすのも無理はない。



 万里亜のそのささやかな望みさえ、叶えてやることが出来なかった。


 守りたいとか、救いたいとか。


 ものが判ってそう思った分、気まぐれの戯言よりたちが悪いではないか。


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