ブラッディマリー
 

 和はその瞳に、万里亜への情を垣間見る。和は、この兄と妹の中に根付いた絶望に、胸の痛みを感じていた。



 この2人は、奪い、犯し、殺さなければ生きていけない。



 それがヴァンパイアの性質なのか、白城家の中で育てられた狂気なのか、和には判らなかった。


 苛立ちと腹立たしさと、憎悪。


 今まで覚えのない感情が渦巻いて、和は万里亜をその場に寝かせると、そのまま澄人の前髪を掴んだ。


 澄人の瞳が動いて、和を見据える。その瞳は、まるで全てを誘っているかのような色香を放っていた。



 ばかやろう、血の繋がりだけでなく、性別まで関係ないのかよ。



 もしかしたら、自分もそんな瞳をしているのかも知れないけれど。



 百合亜をその手で殺した瞬間にとっくに全てを諦めてしまったくせに、まだ奪い足りない、愚かでどうしようもない、ヴァンパイアの男。

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