戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


まさに想像出来る訳のない、この状況に何か理由を見つけることは非常に大変なものだ。



僅かに段差からのつよい引き寄せと力に屈し、私の足元はやけにフラフラと不安定で覚束ないでいた。


そのお陰でロボット男のシャツにしがみかざるを得ないし、それが正当な理由と言い張ろうか。


偽者かつ嫌いな女を抱き締める行動に出て、いったい何を考えているのか分からないのはどっちだ。



「…あの、」

「もちろん干渉はタブーであっても、俺は“見捨てない”と約束しました。
なので、どこまでも自由に動き回る貴方を諦めていますよ。これでもね」


「…じゃじゃ馬だとか、何でも言えばどうですか?」

「フッ、そうですね。昨日の貴方は、婚約者としては落第点でした」


「昔から、ダメ人間のレッテル貼られていますし」

落第点どころか受験資格も得られないでしょうとか、もっと罵詈雑言を浴びせて捨ててくれれば良い。


足の踏ん張りもそろそろ利かなくなる頃で、こうして抱き締められる理由が何より分からないから。


彼のシャツを掴みつつも可愛くない女で居続ければ、フッと一笑にふされるだけだ。


「俺はそれを可愛いもの、と思うことにしますよ。
ところで怜葉さん…。帰ったらまず?」

「…た、だいま」

「ああ、お帰りなさい」


可愛いだとかそんなお世辞などイチイチ構う必要はないが、それを気にする以上にロボット男の言葉で泣きそうだった。


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