戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


ロボット男には朱莉さんが居るのは紛れもない事実であって、こんな優しさは惨めな気持ちが取り巻くばかりなのだ。


冷淡かつ冷酷なクセに中途半端な温情を見せては、ノン・シュガーな関係に波風を立てるとは酷すぎる。



「ほ…、放っておいてよ…!」

涙を堪えられずに絞り出した声は、心もとない。だけども、今度は彼のすべてを信頼出来なくなる。



もう泣いていることがとうにバレていると、ようやく諦めて振り返った。

鼻声まじりの弱気な声を振り絞って、遥か頭上の彼を睨みつけつつ拒否の態度を取った。


前も今もこれからもずっと、バカな自分を悲劇のヒロインに仕立て上げるのはイヤだ。無関心でいれば良かったのに…、どうして出来なかったのだろう?



「泣いている人は放っておけませんね」

「それが…っ」


必死にいくら抗戦してみても、真っ黒な瞳の男はコチラを真っ直ぐ見据えて、相変わらず淡々とした口振りだから悔しい。


会社ではバッサリ切り捨てることが当たり前のクセに、どうして今はちっぽけな女を引き寄せるのだろうか。冷たさを知っているうえでの優しさは、時として武器になると知らないのだろうか…。



「――大切な人だとすれば、尚更でしょう?」

「っ、う、ウソの婚約者に」

「そうですね、」


いい加減に私もイイ大人だ。肯定も否定もしない発言に、この宙ぶらりん状態で何を期待しろと言うのよ?


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