戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


ちなみに昨日とは打って変わって、全身でウン十万円のスタイルで専務と出社して来た私にも目が向けられる。


うわ似合っていない、そう言われていることだろう。一応は笑顔を見せる、受付嬢の裏面が垣間見えて仕方ないわ。


こういう時に冷静である私は、やはり色々と冷めきっているのかもしれないな。


「互いに利用し合うと考えれば容易いことですよ」

「…策士、ですね」

だからこそ珍しく本音もどきを耳打ちした、いけ好かないロボット男の発言に嘘は吐けなかったのだ。


ソレを分かっている男が鼻で笑って片方の腕を寄越すから、悔しさ半分でガッと強く掴んで組んでやった。


今日はアルマーニのスーツか――そう判断がつく、自身のムダな知識にも嫌気がさしてしまう。


実は香りフェチな私は、レディースはおろかメンズのフレグランスも密かに精通していたりもするが。


接近中の男から漂う香りの銘柄を分からないとは、些か不思議に感じてしまうが何故なのだろう?


まあ、イチイチ気にしないでおこう。この香りは優しくて好みでも、これ以上は考えるだけ無駄だわ。


この男が欲するのは利潤というモノであって、かく言う私にしても愛や男への追究など不要だから――


やはり婚約が本当だと驚いている、周りの羨望と妬み(こちらが多勢)を受けて、さらに演技で納得させなければならない。


この婚約において大切なモノはソレだけなのだから、ある意味こんな私の力が役立つはず…。


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