戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?【改訂版】


それを振り切ろうとすればジェンダーの違いを見せつけられて、振り払おうとしてもビクともせず悔しさが募る。


虚しい声だけが宙に待っては消える度、心がキリキリ痛みを感じた。



「答えるまでは離しません」

これほどコチラが必死だとしても、当然の如く彼には関係ある筈もなく。
淡々とそれらを阻むロボット男には何ひとつ伝わらない。



ノリユキに騙されてようやく懲りた、男のことでバカを見るのも。契約と引き換えに手に入れた、今までの人生における最も穏やかな毎日を壊すのもイヤ。



それなのに私の頭は、なぜ以前の失敗を活かせないのだろうか?
支離滅裂な自身のせいで、無意味に胸が痛くて堪らない。



「っ、分かったわよ!」

平行線を辿るだけのやり取りに、今日も先に痺れを切らしたのはもちろん私の方である。



このYESは彼に援助を受けている身なのだから、彼の言う“義務”を受け入れた意味合いも込めていた。


決して求められている役割を履き違えてはダメだと、ここでも言い聞かせてしまう自身に嘲笑するしかない。


昨日の今日だというのに。どうにも出来ない感情が募るから、もう認めざるを得ないのだろう…。


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