アイ
深呼吸を一つすると、左目を閉じ、恐る恐る右目を開けてみる。

視界が切り替わり、まずすぐ近くに茂みの葉っぱが、次に公園内で遊んでいる人達の姿が見えた。

最初はびくびくとしながら、次第に落ち着いて、その風景を眺めた。

誰も僕には気付かない。

なんだか透明人間になったような気分だ。

こんなにもまじまじと外の風景を見るのは、子供の頃以来かもしれない。

音が聞こえてこないので無音なのが残念だ。

耳も取り外せたら違うだろうかと思うが、さすがに体のパーツがそんなにぽろぽろと取れるのは困る。



しばらく僕はぼんやりとその光景を眺めていたが、視界の片隅に野良犬らしき姿を見つけると、素早く個室から飛び出して目玉を回収した。



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