隣の秀才君
隣の速水君



今日この頃、空き部屋だったはずの隣の部屋にイケメンがいた。


「何だお前は」


髪をくるくるいじるイケメンがキッと睨みを効かせる。つーかそれはこっちの台詞だ。

私の隣の部屋は去年独立した兄のもので、今は使われていない。だから誰もいないはず。

つまりこのイケメンが兄の部屋にいるのは明らかにおかしいのだ。

そんな結論に行き着くなり、私はドアを開け放ったままに階段を駆け下りて叫んだ。




「パパーっ!不審者ぁああ!」


「なっ!秀才であるこの俺が不審者なわけな」


「パパぁーっ!!」


背後から足音が追ってくる。
振り返ると必死な形相のイケメンが私の背後に。ちょ、マジで怖い。


「おい、待て!」


「ぎゃー!パパっ!」


階段を三段飛ばしくらいで駆け下りてからリビングに飛び込むなり、ソファで優雅に新聞を広げる父に私は思いっきり抱きついた。

異常事態なはずなのに父はゆっくり新聞から顔を上げて、私と背後のイケメンを交互に見てから漸く口を開いた。


 
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