触れることもできない君に、接吻を
「あ、テレビでやってるんじゃないの? まあ、そんなに大きいニュースじゃないけど」

俺はその声に反応し、すぐに近くにあったテレビのリモコンを手にした。
そして点けっぱなしにしていたテレビのチャンネルを変え、ニュースにする。

すると偶然、このニュースがやっていた。
まるで俺に見ろと言わんばかりに。

ニュースの内容は、この地域の林で中学生と思われる女の遺体が発見されたとのことだった。
その女の身元を確認してみると、最近この辺りに引っ越してきた藤森由梨という子だということが発覚。
女は絞殺されており、警察はこの女の周りの奴らからアリバイ調査などをしていくということ。

俺がきっとあいつじゃないと自分に思い込ませていると、女性ニュースキャスターの横に一枚の写真が現れた。

「この方が被害者の藤森由梨(14)です」と、キャスターが淡々と言っていく。

俺は少し恐ろしげにその写真を見た。
もしかしてあの女か、という不安が俺を襲った。
いいや、そんなの有り得ない、という現実的考えが俺を支える。

写真を見た途端、俺は息を呑んだ。
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