儚恋。
名前を答えない彼に私は苛立ちを覚えた。
「あの、名前は何なんですか?」
「…あぁ、そうだった。
僕は高原蛍(ケイ)。
同期だから敬語なしね」
“高原蛍”……。
その名前には
聞き覚えがあった。
確か……雄都くんと並ぶくらいのイケメンで
知的な雄都くんに対して
高原蛍という人は天然だって。
そう思い、
高原蛍の顔をまじまじと見てみると噂どおり顔は
整っていた。
無造作に整えられた痛みのない黒髪。
透き通るほど綺麗な黒目。
羨ましいと思うくらい
白めな肌。