美しいあの人
言われてみればその通りかもしれない。
祐治は断らない。
あたしが迫ったときも断らなかった。
結果的にあたしの家の居心地が良くて、祐治はあたしの側にいるけれど、
最初は非常に受け身だった。
今でこそ「エリが大事」と言ってくれるけれども、
それだってもしかしたらあたしに合わせているだけかもしれないし。

あたしの家から出て行かないけれど、祐治は芙美子さんと会うこともやめない。
芙美子さんのプレゼントを受け取ることもやめない。
会わないでほしいと頼んでみたが、エリが気にすることはない、
だって芙美子とは友人なのだからと言われた。
祐治が友達だと思っていても、芙美子さんはそうは思っていないはず。

「ま、気にするなっていうんだから気にしないでいるしかないんじゃないの？　
それでどうしても気になって許せないってエリちゃんが思うんだったら別れた方がいいと思うな」
「許せないってことないの。気にはなるけど」
「気にはなるけど、よその女からもらったものを着られているのはイヤだと」
「そういうことなのかなあ」
「そういうことじゃないの。
自分がいるのに他の女からも面倒をみてもらっているということが許せないんだと思うよ。
普通はイヤでしょうねそういうのって」
あたしは、その千鶴さんの言葉になにかを思いついたような気がした。
ちょっと考えてみる。フォーがなくなったので、器の中のスープを飲んだ。
甘くて辛い。祐治みたいだと思った。
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