Nocturne




「…まぁ、そんなところかな。
そんな時に高柳が帝を紹介してくれてね。
私は彼の人柄に、すぐに惚れたわ。好きになった。
けど、彼とはすぐには別れられなくてね?
それで、帝が間に入ってくれて、結構ごちゃごちゃしたんだけど別れられたの。

けど、私は帝を好きだとは言えなかった。
…また同じことになったらどうしようって言う恐怖から言えなかったの。
信用してないわけじゃないの、だけど、トラウマになっててね。
そうしたら、帝がね、こう言ってくれたの。
『すぐには俺を信じられないかもしれない。
年下だから、頼りにならない時もあるかもしれないが、俺は紫織のことが好きだ』
って言ってくれたの」




その瞬間、藤代さんはすごく幸せそうな顔をした。

どこかで見たことのある、表情。



…ああ、写真だ。

あの頃の写真を見たら、こんな顔、私もしてた。


凄く、どうしようもなく、幸せで。

永遠にこの幸せが続くんだと、そう信じて疑わなかったあの頃の。




「私は今、すごく幸せよ。
帝を信じて、本当によかったと思ってる。
…だからね、成瀬さん」



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