大海の一滴

『シンデレラは沢山の決断をして大人になったけれど、人魚姫は綺麗で素敵なものを追いかける少女のままでいることを望んだ。きっと、そういうことではないかしら』

 ビターでメルヘン味のクッキーを思い出す。



 愛美ちゃんのママは、こうも言ってくれた。


 ぽってり赤い唇で。




『でも、私はどちらのお姫様も大好きよ』




 私がシンデレラになるには、運命を切り開いて『綺麗で素敵ではない』決断をしなくてはならない。

 だったら私は、人魚姫のままでいい。


 悲劇のヒロインもまた、乙なのである。




 ただ一つだけ。心残りがある。

 だから泡になる前に、私はそれを信頼するタツユキ君に、そっと託すことにした。




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