運命のヒト
「……今……なんて?」
「へ? だからぁ、美園ちゃんを誘ったら言われたんだよ。
シロっていう年上のお兄さんと遊ぶ約束してるから、って。すげぇ嬉しそうに」
すぅっと体温が失われていく感覚。
思考も、言葉も、呼吸すらも一瞬にして停止した。
“年上のお兄さん”
彼はたしかに、そう言った。
石のように立ち尽くすあたしたちに、トシローくんが不思議そうにしている。
そして彼はさらに、あたしたちの衝撃に追い打ちをかける言葉を放った。
「でも数日後に俺が、シロってどんなヤツなのか美園ちゃんに尋ねたら
誰それ?とか言われたんだよね。
そんな人知らない、ってさ。
何だそりゃって感じだったよ~」