運命のヒト
『おはよう、美園。たった今起きましたっていう声だな』
親しみと愛情をこめた、からかいの声。
九州にいる父だ。
すでに10時半を指す時計を見ながら、あたしはバツの悪い気分で笑いをもらした。
『最近どうだ? 元気にやってるのか?』
「うん。お父さんも風邪ひいてない?」
『おかげさまで風邪をひく間もないほど忙しいよ』
あたしは携帯を耳に当てながら、ダイニングテーブルの椅子に移動した。
『ところで、大事な話なんだが』
ふいにお父さんの口調が改まる。
『来週の件、どうしても重要な仕事があって帰れそうにないんだ』
あたしは冷蔵庫に貼ったカレンダーを見た。