§魂呼びの桜§ 【平安編】
左近少将が目の前にいる。



御簾の向こうに端然と座している。



穏やかな表情でこちらを見ながら、ただただ静かに微笑んでいる。



恋しい方が、手を伸ばせば届く所にいた……。





少将の笛は若い公達の中でも特に秀でているのだよ

それをあなたにも、是非聞かせて差し上げたいと思ってね




と女御の隣に座る帝が言った。



その言葉に、女御はすべての感情を押し殺して微笑む。








庭の木々が赤く色づく季節になっていた。





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