あなた色に染まりたい
「なんだ?紗羽に美香とられんのか?」


「あ、悟。終わったの?」


「おー」




いつの間にか講義が終わって、食堂に戻ってきた悟へ視線を向ける。


いつもの爽やかな笑顔を見ていると……


何でも言うことを聞いてくれそうな気がする。




「悟……美香をあたしにちょうだい」


「紗羽?……どうしたよ?」




悟の中のお兄ちゃんが、目を覚ました。


大輝のことで落ちていた時、いつもこうやってお兄ちゃんのように、話を聞いてくれた。


そんな悟を見ていると、あたしの中の弱い部分が出てきてしまう。




「あたし、もうダメ」


「なんかあったのか?」




あたしの言葉に即座に反応したのは、悟ではなく……、晴希。


しかも、いつものふざけた表情とは、ずいぶんとかけ離れた真剣なもの。


まだ晴希にはすべてを見せれないからか、本音は言えない。




「ごめん……ちょっとあったけど、半分はふざけてるから気にしないで」


「どうしたんだよ」




濁した言葉に、なおも追求してくる晴希だけれど……


やきもちだなんて、恥ずかしくて言えないよ。




「あ……、蓮」




そう言った悟が見ている方向に視線を向けると、やっぱり女の子に囲まれている蓮がいた。


無意識に、顔を歪めてしまう。




「紗羽……もしかして、蓮のあれが原因?」




そんなあたしの表情から、すぐに見破られてしまった。


晴希は鋭いな。


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