あなた色に染まりたい
あたしのその行動を見て……




「ちゃんと話したほうがいいぞ?」




晴希は、そう言ってくれるんだけど……




「無理だよ……大輝の時とかぶりすぎて、怖いの」




そうなんだ……


ただ、そういう場面を見たってだけじゃない。


どうしても、あの時の大輝の姿と被りすぎて……


蓮は二度とあたしのもとへ、戻ってこないんじゃないかって……


それが、辛くてたまらないんだ。




「あ……俺の携帯にかかってきた」


「えっ……知らないって言って!知らないふりして!」




今はまだ、会いたくない。




「……いいのか?」


「うん」




晴希は、部屋を出てから電話に出た。


晴希の声がもれてくるけれど、どういう話をしてるかはわからない。


こういう時、家が隣って凄く気まずい。


今日、帰れないよ……


晴希、泊めてくれるかな。


いくら晴希とはいえ、二人で一晩ってのは……やっぱりマズイかな。




電話が終わった晴希が戻ってきた。




「紗羽、言わなかったけど、ホントに良かったのか?」


「うん」


「蓮、かなり焦ってたぞ。ちゃんと話したほうがいいって」




それは、わかってる。


蓮から連絡してくるってことは、少なからず、あたしのことを心配してくれているから。


でも……、今は会う気には、なれない。




「……とりあえずメールだけしとく」


「ん……そうだな」




“心配しないで”というメールだけ送って、また電源を切った。


< 253 / 423 >

この作品をシェア

pagetop