あなた色に染まりたい
「場所変えていい?」




蓮は顔を歪ませながらそう言って、車を走らせた。




仕事帰りに迎えに来る時は、明るい笑顔しか見せない蓮。


いつもと違う姿に、凄く不安になる。


何か、あったのかな。




10分くらい走らせたところで、蓮は車を止めた。


周りは何もなくて、真っ暗。




「ここ、どこ?」


「ん?下に降りていくと川がある」


「あ、そうなんだ」


「今は寒いから降りないけどな」




蓮は真っ直ぐ前を見ながら呟くように言った。


確かに寒い。


さっき、雪がパラパラ降っていたから、また降りだすかもしれないな。


そう思いながら、窓の外へ視線を向けた。




「……紗羽」




カーステから流れるバラードをBGMに、蓮が消えそうなほどの小さな声で名前を呼ぶ。
< 356 / 423 >

この作品をシェア

pagetop