あなた色に染まりたい
「蓮」


「ん?」


「今のあたしの頭の中には、もう、蓮のことしかないよ?」




桜を見上げている蓮の横顔を見つめながら、今の本音を口にする。


ゆっくりとその横顔がこっちに向けられ、切れ長の綺麗な瞳とぶつかった。




「マジ?」


「うん、マジ」




蓮を安心させたくて、精一杯笑って見せる。


一瞬だけ切れ長の瞳が、少し見開いたように見えた。




「やべ……」




口許を手の甲で隠しながら、その瞳は顔ごとそらされてしまった。




「蓮?」


「ん?」




返事は聞こえるけれど、表情が見えない。


そうなると、胸の奥の方から、少しずつ寂しさがわいてくる。




「蓮」




顔を覗き込むように、蓮の方へと体を近づけた。


その瞬間……


蓮の腕が伸びてきて、そのまますっぽりと、大きな胸の中におさめられてしまった。
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