あなた色に染まりたい
しばらく撫でたあと、その指がゆっくりと唇へ移動し、そのまま弧を描くようになぞる。


とくとくという音が、どくどくに変わり、心臓が痛いくらいに動いている。


人差し指がまた頬へと戻り、今度は、手のひらが頬を包んだ。


そのまま、蓮が近付いてきて……


唇が触れた。


啄むようなキスが、次第に深くなり、心も身体も熱くなってくる。




四年前、桜の木の下で見た光景のせいで、もう二度と恋はできないと思っていた。


それに、こうやってピンクを直視できるようになるとも、思わなかった。




だから……


こんな風に、桜を見ながら蓮と触れ合えることが、ほんとに幸せ。




ただ傍にいてくれるだけでいい。


こうやって触れ合えるだけでいい。




これからも蓮の傍で、一緒に笑っていたい。






『お花見デート』fin

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