あなた色に染まりたい
「俺さ、紗羽さんの涙を見た時……ホントに綺麗だと思った。でもやっぱり、紗羽さんは笑ってる顔が一番綺麗だと思う。だから、紗羽さんの心からの笑顔を見てみたい。」


「……蓮。」



どこからどう見ても、あたしのことを、凄く考えてくれていると伝わってくるその言葉に、胸の奥が熱くなってくる。



「紗羽さんが前へ進むためには、あの場所から始めなければならないんだろ?」



今のあたしは、あの日のあの場所で止まっている。


だから、ちゃんと前へ進むには、蓮が言うように、あの場所から始めるべきなんだ。


だけど、今のあたしには……その勇気が、ない。



「その場所へ行って、たくさん泣いて、たくさん叫んで……俺、何度でもついていくよ?紗羽さんが泣かなくなるまで……辛くなくなるまで……ゆっくりでいいじゃん?」



蓮の心のこもった言葉に、心が凄くあったかくなって、涙が出てきた。



「なんで……蓮はあたしのためにここまでしてくれるの?」



相変わらず、あたしを見下ろしている蓮は、親指であたしの涙を拭ってから、やさしい瞳をあたしに向けて口を開く。


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