恋の魔法と甘い罠
女の子たちの誘いを断ったからこうやってここにいるんだと思うと凄く嬉しいはずなのに、和泉さんの表情も声もどこか不機嫌そうで。


あたしが何かしてしまったんじゃないかと不安な気持ちが出てきた。



「こそこそと会っていたわけじゃねーんだよな?」


「え?」



こそこそ……って……



「そんなわけないじゃないですかっ!」



つい大きな声が出てしまった。


だって、和泉さんは、あたしがまだ慎也さんのことを忘れられないと思っているかもしれないとはいえ、ちゃんとお別れして、しかもそれを見届けてくれていた和泉さんにそんなことを言われるなんて思いもしなくて。


――ううん、違う。


それもあるけれど、それより今は、たった今自分の想いに気づいたばかりとはいえ、和泉さんに勘違いされたことが凄く悲しかったんだ。
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