恋の魔法と甘い罠
手に持っていた腕時計をバッグに突っ込んで携帯を手に取る。


受信BOXを開くと……


そこには慎也さんの名前。


和泉さんには気付かれないように中身を見てみると



『俺の腕時計を知らないか?』



と書いてあった。


慌てて『あたしが持っています』と打とうとしたけれど、片手を掴まれているからうまくできなくて。



「あの……離してください」


「何で?」


「返事がしたいんです」



そう言うと、少し考えてから離してくれた。


そのまま文字を打って送信すると、『今夜部屋に行く』と返ってきた。


だけど――


昨日の光景が脳裏を掠め、無意識に顔が歪んでしまう。


もう二人では会いたくない。


だって会ったら、また都合よく抱かれるだけだもん。


でも心の何処かで、会いたいと思っている自分もいて。


どうしよう……


結局それに返事を返すことができなかった。
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