恋の魔法と甘い罠
「玲夢?」



慎也さんはなにも答えないあたしの顔を覗き込んできた。


今まで即答で「待ってます」と答えていたから、もしかしたら変に思っているのかもしれない。


だけど、この空気、いい機会なんじゃないかと思う。


それでもそういう言葉は出てこなくて、慎也さんと目を合わせることもできず、視線だけを、すっ、とそらした。


慎也さんはそんなあたしに、



「予定ある?」



と訊いてきた。



「予定は……」



ないけれど、もうアパートには来ないでください。


そう言わなければならないのに、あたしの口からはその言葉は出てこない。


やっぱりあたしは、心のどこかで慎也さんと離れたくないと思っているんだ。


だけどいつまでもこんなことを続けているわけにはいかないから、ちゃんと言わなきゃ!


そう思っているのに……。
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