Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
それでも私は口を閉じなかった。
閉じる事が出来なかった。
「“全ての恋愛は失恋である”って、黒野君は言ったけれど――」
僅かに彼の両肩が痙攣し、そして、
「じゃあ……今…こうしているのも…?」
「違う!!」
ずっと黙していた彼は弾けるように口を開き、
荒々しく私を抱き締め返した。

「…ッ……!」
反射的に目を見開いた私の目尻からぽろぽろと止め処なく
涙が溢れ出す。彼の腕が、指が、とても熱くて涙が止まらない。
「きっと違う」
腕の中に居る私に向かって彼はもう一度繰り返した。
まだ濡れている私の髪の隙間を縫って、
低い声が耳穴に染み入る。
「桐生さんは……失恋だと思っているんですか…?」

それは、長い長い夜の始まりを告げる問い。
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