【完】短編集~幼馴染み~
「…っ…ぅ……っ…」
純は、あたしをギュッと抱きしめてくれていた。
「じゅん――……」
「夏希……」

泣き終わったあたしをそっと離した純は、真っすぐこちらを見て、聞いてきた。
「あんたは…夏希は、伝えないの?自分の、気持ち」
「伝えたって、夕陽を困らせるだけ、だし」
「そんな!」
「それにね、あたしは…夕陽が幸せなら、それでいいの。夕陽が笑顔でいれるなら、それでいい。夕陽が笑顔なら、あたしは幸せ。夕陽の幸せが、あたしの幸せ、だから」

そう…。
キミが幸せになるのなら、あたしはこの想いを、封印する。
心の奥に、何重にも鍵をかける。


「だからさ、ホントは涙出るなんて、おかしいの!」


「純、心配かけちゃって、ごめんね!でも、もう大丈夫だから!」


「あたしは、夕陽の恋を、応援するから!」


それが、あたしにできる、唯一の、ことだから。


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