偽りの恋人
仕事が終わったのにさっさと帰らなかったから、課長が怒っていたのだろうか。
そんな視線ではなかったような気がするけれど。
そもそも、そんなことで怒っているところを見たことがないし、怒られたこともない。
…じゃあ、何故?
「…まぁ、どうでもいいか」
直接何かを言われたわけでもないし、もしかしたら目が合ったと思っただけで合っていなかったかもしれない。
そもそも私を見ていたかどうかだってわからない。
何か別のものを見ていたのかもしれない。
…見ていた、というより睨んでいた、に近い顔だったけれど。
どちらにせよ、私には関係ない。
