セックス·フレンド【完結】
妊娠したから竹内さんを選んだなんて、そんな言い訳、聞きたくなかった。


なぜ、本当のことを言ってくれないのだろう?


ここまできても、あたしを傷つけまいとする隆也の残酷な優しさが憎かった。


あたしには、言える口がいくらでもある。


セックスレスだと言いながら妊娠させたこと。


何も結婚だけが責任の取り方ではないということ。


あたしを愛していると言いながら、逃げようとしていたこと。


いくらでも責めて、罵ることはできた。


でも、そうしなかった。

なぜなら、そうしたところで、何も変わらないのはわかっている。


隆也に勇気がないのなら…。


あたしを傷つける勇気も真実を語る強い気持ちもないというなら…。


悲しいけれど、あたしの口から言ってあげよう。


教えてあげよう。


認めたくはないけれど、大好きだからわかる、あなたの本当の気持ち。


それを、あなたを愛してやまないあたしから言わせるなんて…。


あたしは、初めて隆也を心から憎いと思った。


けど、川が最終的に海へ流れ着くように、憎しみの感情すら、最終的には愛おしさに繋がってしまうのはなぜなのだろう。
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