セックス·フレンド【完結】
歩き始めてほどなくすると、一台の車が、あたしの隣にぴたりと止まった。


フルスモッグの窓がするするとおり、運転席から、男と呼ぶにはあどけなさの残る青年が問いかけてくる。


「お姉さん、寒そうだね?良かったら乗っていかない?今夜は冷えるよ」

そう、車の中から手招きしていたのは、ついさっき、もう会うのをやめようと約束したばかりの、大好きなセックスフレンドだった。


あたしは彼の誘いに頬を緩め、導かれるように、助手席に乗り込んだ。


あたしが乗ったのを確認すると、彼は何も言わず、車を発信させた。



氷のように冷えたあたしの手に、彼の暖かな指が絡められていく。



あたしは、その手を強く握り返した。



「今夜は本当に寒いわね。どこか、暖かい場所に連れて行ってよ。二人きりで温めあえるところに」


あたしが言うと、彼はにっこり微笑み、濡れたあたしの頬に触れた。


彼の体温を感じたあたしは、子供のように安堵して目を閉じる。


目の前を走る車のテールランプの赤が、閉じた瞼の裏で、煌々と燃えていた。
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