桜琳学園(仮)

しん、と静まり返る空間で私は一粒の涙を流していた。

「彼はプロジェクトのことを知っていたから、連絡が途絶えていても、待ってくれているのだろうと思っていた。
だが、帰国して連絡を取っても彼には繋がらず、調べたら葬儀から10日も経っていた。
すぐに桜に連絡をとったが、取り合ってもらえなかった。当然のことだがな…。私はそれからなりふり構わなかったよ。会社のことは竹中に任せて、私は桜と向き合うことに集中した。
桜の仕事場に足を運び、毎日3回は電話した」

…ストーカー?

「そのおかげで繁様は何度か通報されそうになりました」

…でしょうね。
竹中の横やりに深く頷いた。私の目からこぼれていた雫は乾ききり、冷徹な視線を近江に向けていた。

「そのおかげで、桜は私と会ってくれるようになったんだ。結果オーライじゃないか」

お母さんが家出た理由って、中絶発言だけが問題なんじゃないんじゃないの?

「麗羅、私はお前のおじいちゃんだ」

「え?うん。」

突然断言してくる近江。
もうなんか、この人のことすごい人だと思えなくなってきた。

「私はもう間違えない。彼に、勇也君に誓って。もう2度と。
この話をしたからといって、すぐに許しもらえるとも、信用してもらえるとも思っていない。しかし、」

「もうわかったよ。あなたが本当は、……馬鹿な人だってことは。」



「・・・」



近江の発言を遮り発した言葉で生み出した沈黙の空間。。。
いたたまれない雰囲気の中、部屋にひとつの笑い声が響き渡った。

「もうだめです。麗羅様、参りました。あなたはとても清々しいお方ですね」

「は、はぁ…」


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