砂場のロケット 〜キミと見る群青〜



乗ったのは電車

目的地までは十分くらい


世間は、もう春休みで
霞がかった白い光の中
座っている人達は うたた寝


卒業旅行にでも行くのか
大きな荷物を抱えた三人組が
"春スキー初めて"とか
賑やかに会話を交わしている




すし詰めでは無いが
それなりに混んだ、都心の見慣れた風景




「 …ねえ

上着貸してくれたのはいいけど
なんかスッゴいタバコくさいわ… 」


部屋から飛び出したままのドレス姿

あの部屋にはいいが
街中では、少し目立ち過ぎ


肩が出ていて、寒そうなのもあったから
仕事場で着ている、ジャンパーを貸した




「 そっか ごめんね

俺も仕事場の人達も
全員タバコ吸いだし

最近家にも、
あまり帰ってなかったから 」




「 …その辺遅れてるのよね
ニホンって

―― 仕事って、そんなに忙しいの? 」


「 忙しいよ

楽しいけどね

… こんなに楽しかった事
なかったって位に 」




「 …ふぅん… 」



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