秘書室の言えなかった言葉
でも、その事にホッとする私。

園田 知里(そのだ ちさと) 31歳

倉木と同じ秘書課。

倉木は3年位前に秘書課に異動して来たのだけど、私は入社時からずっと秘書課にいる。


現在、私は主に現社長のお父様である会長の秘書をしている。

だけど、会長は数年前から体調が良くない。

それもあって、当時社長だった会長は、社長職を退き、息子である真人(まさと)さんに社長職を任せた。

そして今は、会長に就任し、体調を見ながら仕事をしている。

そして、基本的には自宅で休まれている。

と言っても、奥様のお話では、自宅で出来る仕事をしているみたいだけど。

だから、私は会長の秘書だけど、会長の指示で社長秘書である倉木のサポートもしている。


そして、誰にも打ち明けた事はないが、私は倉木に想いを寄せている。


「相変わらず、モテモテだねぇ」


倉木の腕をポンッと叩き、何も気にしていないフリをする。

本当は、倉木が告白をされている現場を見たり、告白されたという話を噂で聞いたりする度に

“倉木、OKするのかな……?”

って、不安になる。

だって、

“倉木には好きな人がいる”

という噂があるから。

もし、その好きな人が告白をしてきたら?

倉木はきっとOKするだろう。

だから、断った事がわかる度に、ホッとするの。


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