臆病な初恋。



鞄を手に持ち、外を出ると丁度亜清も家から出て来た。
私の全身が震えているのが分かる。

〝おはよう〟と言うべきなのだろうか。
その前に謝らなくてはならない。


亜清は私の事をじっと見ているが、表情がなくて何を考えているのか分からない。



「おはよう…この前はごめんね」



しばらく無言だった。

そして、


「悪いけど、もういいわ。じゃあ」



そう言い残して歩いて行った。


私はその場に立ち尽くした。
亜清の言った言葉の意味が理解出来ない。
しかしいつまでも突っ立っているわけにもいかないので、学校へと歩を進める。



学校に着くまで亜清の言った言葉の意味を考えていたが、やっぱり分からなかった。だけど、学校に着いて亜清の言った言葉の意味がよく分かった。






私と目を合わさない。
それだけじゃない。
いつもなら話しかけてくるのに、話しかけてこない。


この前の、学校では離れているって提案で私と関わらないの?



………違う。

〝悪いけど、もういいわ。じゃあ〟


この言葉は、もう私と関わらないという意味だったのね。


不思議と泣いたりはしなかったけど、心がなくなったみたいだった。




その日以来、私と亜清は〝他人〟になった。



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