抹茶な風に誘われて。
「この一週間で、お前からの着信はゼロ。メールも俺が送ったものへの返信のみ。しかも先週土曜に会ってから、次の約束も何もなし。これが付き合ってる恋人同士だって言えるのか?」

 冗談めかして訊ねられ、私は何も答えられないでただ静さんを見上げて。

 ふう、と息を吐いた静さんが腕を組む。

「用事がなかったって――ただ声を聞くためってのが立派な用事だろう。まあ、それも思わないって言うなら俺はこれ以上何も言わないけど……っておい、かをる? なんで泣いてる?」

 あわてたように覗き込まれて初めて自分が泣いていたことに気づく。

 頬をつたう涙を静さんが拭く暇もなく、私は両手で顔をおさえて、本格的に泣き始めてしまったのだ。

「わ、私……ずっと静さんの声、聞きたかった。もっと……もっと一緒にいたかった、んですっ。で、でもっ――付き合うとか初めてで、どうしたらいいかわからないし……そっ、そんなの自分のわがままだって、思って――」

 それ以上は言葉にできなかった。

 あとからあとからあふれてくる涙を必死でこらえようとしたつもりだったけれど、驚いたように丸くなっていた静さんの瞳が優しくなって、また抱き寄せられてしまうと、もう止まらなかった。

 小さな子供のように泣き続ける私を、静さんはずっと抱きしめてくれていた。


 ――今度は、まるで親が子供を抱いていてくれるみたいに。
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