「愛してる」、その続きを君に
夏海とふたり、もっと求めあいたかった。
時にはけんかをしても、互いに許しあって、また一歩を踏み出したかった。
自分たちが過ごしてきた日々に、特別なことが大してあったわけじゃないけれど、それが一番の幸せだったのだ。
こんなことに今気づくなんて。
あの頃、何も考えずに無邪気に唇を、身体を重ねたことさえも、今更ながら悔やまれる。
そんな後悔と、愛する人を失って欠けてしまった心。
そして罪の意識に、これからの自分の未来が苦しいものでしかないと思えた矢先に、あの夢の中での夏海の微笑み。
弱い自分が情けなく思えて、彼女から思わず目をそらしてしまった。
だが今、天に舞い上がる夏海の手紙を見ていると、彼女がどんな気持ちであの笑みを向けてくれたのかわかった気がした。
こんな自分に彼女は愛想をつかすことなく、優しく笑ってくれたのだ。
「なあ、ナツ。おまえは俺がどこにいてもそばにいてくれたんだな…」
信太郎は空を見上げて目を細めた。
「会えなくなればなるほど、おまえはいつも俺を深く想ってくれた。会えない時間が長くなればなるほど、おまえは俺のそばにいてくれたんだ」
手紙の束は跡形もなく黒い灰となって、風に小さく舞っていた。
「俺は今の今まで、そのことに気付かなかった。おまえがここにいるって」
そう言って、人差し指で胸をつついてから、微かに笑った。
だが、すぐに溢れてくる涙。
「これからも、そばにいてくれよな…」
そして彼はこう付け足した。
「手紙、サンキュ…」
空には一番星が、冷たいほどの白い光を放ちながら、瞬いていた。