箱庭ラビリンス


それなのに、大事だと思う気持ちだけは確かに存在して、それだけでナナギくんを思っていて……もしかするとそれは彼で……。


不確定な事実なのに今からぐちゃぐちゃで、脳内のキャパは簡単に越えそうになる。


呻きたくなる衝動を抑えて天井を仰いだ。白い天井に落ち着きを求めた。落ち着ける筈もないが。


苦し紛れの手段として大きく溜め息を吐き、ベッドに寝転がる彼女に顔を向ける。声を掛けた。


「菜穂姉」


「なぁに?」


返事をしながらも、雑誌を読む目も、お菓子を口に運ぶ手も忙しなく動かす。


私はそれに構う事なく想いを告げた。一番強いであろう想い。


「逃げてしまった……」


後悔にも近かったのかもしれない。


一言呟けば、起き上がって私に顔を向けた。


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