光を背負う、僕ら。―第2楽章―

透明な約束




伸一と話そうと決意した翌日。


その日の授業はもう5時間目までが終わり、残りはあと1時間とショートホームルームを残すだけとなっていた。



いつもと変わりなく回り続ける時計の針を見ては、何度もため息が零れる。



あたし、舐めてたかもしれない……。


伸一と話そうと思ったところまでは良かったけれど、よくよく考えると伸一と話せる接点なんてほとんどないんだった。



二人で過ごした放課後の時間にあまりにも自然に会話を出来るようになっていたから、すっかり勘違いしていた。



……あたし、伸一と教室で話したことあったっけ?


記憶を辿ってみるけれど、数えるのも虚しくなって途中でやめた。



休み時間になって話しかけようとするたびに伸一はすぐに友達に囲まれてしまい、タイミングを失うどころか掴むことさえ出来ない。


今日はそれの繰り返しばかりだった。

失敗の数だけ、ため息が零れる。



5時間目と6時間目の間のこの休み時間も、やっぱり声を掛けることが出来なかった。



現に伸一は友達と腕相撲をして遊んでいる。


よっしゃーとか、やられたーとか。


男子のふざけた笑い声が教室の真ん中で飛び交っていて、それを見た周りのクラスメートからも野次が飛んだり笑い声が漏れていた。



みんなが、伸一に引きつけられる。

伸一は、たくさんの人を虜にする。


あたしもその一人なわけだけど、今はそんな伸一の魅力を嫌に感じてしまうぐらいだった。



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