百物語

┣17本目 深夜のドライブ

いい話ッスねー。

じゃあ、俺は怖い話を。

あれは彼女と深夜にドライブに行ったときの話なんだけど…。

その辺りは少し山奥で俺達が住んでいる場所ではちょっとした心霊スポットとして有名な場所だったんッスよ。

山道を辿って帰るだけのドライブをしてたんッスが他愛のない話に和気あいあいとして運転してました。


そして、ある場所を通った時です。

彼女がいきなり寒いって言い出したんッスよ。

山奥の夜とは言えクーラーこそ、そこそこ効いてましたが車ん中…それも夏にですよ?

でも、クーラーかなって思い「じゃあ、クーラーとめるよ」と言いました。

俺的にはクーラー消すのは嫌でしたけど。

そして、暫く行くとまた彼女がおかしなことを言うわけですよ。

「ねぇ…あそこに女の人が…いない?」


ってね。

山奥の…深夜1時を過ぎたこの時間帯に女の人がいるわけないんだよね。

そもそもここは昼間であっても歩道はなくてすぐそばは崖になっててガードレールしかないから人なんて歩けるわけなくて…車もあまり好んで通る道じゃないんですから。

「気のせいじゃない?」

「違うよ、あの先に…立ってるよ!女の人が…あっ!こっち見た!ほら!」


「あそこ!」と指差す彼女をちらりと見て、その場所を見るけどやっぱり何もないわけ。

「居ないよ?」


「いるよ!…あっ、こっちに近づいてくる!」

彼女の怖がり方を見ると嘘ではないのは分かるんですが…俺にはさっぱり見えませんでした。

なんだろ?と思いつつも俺がそのまま運転し続けていたときです。

「こっちにきたよ!あっ!危ない!」

「えっ…?」

「ぶつかる!!!きゃあぁ!!」

その彼女の一言に俺は慌てて急ブレーキをかけました。

「なっ…!急に叫ぶなよ!何もいないじゃん!」

「本当なのよ…。今、確かにこの車の前まで走ってきたのよ…白い服を着た女の人が…」


カタカタと震えている彼女を見て、見えてこそいないものの怖くなって俺は急いで車を走らせて家に向かいました。

翌朝、車を調べたけどなにもなかったんッスよね。

でも、彼女はあの人の目がとても怖かったって言ってました。

それ以来その話はタブーになって、その場所にも行ってません。

よく考えてみたら…怖い話なんッスよね。

俺には見えない何かが俺の近くに来てたのだから…。

今でも、その女の人のことは分かりません。

でも…そこでよく事故が多発するようになったとは風の噂で聞きましたがね。

これで、俺の話は終わりです。

ーーフッ シュポ


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