太陽と雪
あの時は本当にビックリした。

年相応の女の子らしく、恋愛というものに憧れていた私は、心臓がうるさいくらい速く動いているのに、気が付かないフリをした。


それから、この男とはずっと一緒にいる。
まあ……私にピッタリだと思っている。

母に似て辛辣で素直すぎる物言いの私を牽制してくれるし。

たまに、本人も毒は吐くけどね。
……ごくごくたまに。


「シャツのボタン……掛け違えておりますよ?

お嬢様は外見的には大人の女性でございますが、精神年齢は幼稚園児以下なのですね。

そう思うのは、私だけでしょうか。

まあ、そのようなお嬢様は、とても魅力的なのでございますが」


「………。」


矢吹…貴方って人は……
たまに毒を吐くんだからっ!! 


まあ……
でも…悪い気はしないわね。
冷静になって自分を見下ろしてみると、確かにボタンが1つずつズレている。


「……失礼いたします。
私にお任せ下さい、彩お嬢様」


矢吹は、私の前に膝を付いて、シャツのボタンを器用に外す。


「何してんのよっ…!
この毒舌変態執事っ……///」

シャツのボタンを外されるということは、必然的に下着を見られることになる。

「そのような口のきき方はいかがなものかと。
彩お嬢様がお召になっていらっしゃる下着を含めた衣服を洗濯しているのは、この私です。

それとも、誰か私以外の他の殿方にでもお見せするために、そのような黒地の花柄をお召しになっているのでしょうか。

私はそう解釈いたしました」


………。


今、今、この執事、さりげなくエロいこと言わなかった?

しかも、下着チラ見どころかガッツリ見てるし!

お嫁に行けないじゃない!

貴方がお嫁に貰ってくれるわけでもないくせに。

「何よ。
先に毒を吐いたのはそっちでしょ?

それにしても、この私に毒を吐くとはいい度胸しているわね、全く。

私は……私なりの言い方で貴方に仕返しをしただけよ。

……まあ、いいわ。
ありがとう。
下着を見られたのも、ノーカンにしてあげる。


矢吹、貴方は先に食堂に降りていなさい」

とにかく、矢吹を先に食堂に行かせた。

鞄やスーツの上着を一緒に持って行こうとしたが、置いたはずの場所になかった。

やだ、私、まだ30歳なんだけど!
若年性認知症とか、まっぴらごめんだ。

犯人はアイツしかいない!

矢吹 涼!

気を利かせて持って行ってくれたらしい。

それならそうと、主人に一言、言いなさい!

貴方の主は私なのよ!

まったくもう。
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