太陽と雪
彩お嬢様がお休みになった後、麗眞さまと相沢に診察結果を話した。


「なるほど……

昔と今の美崎さまは、180度違いますからね……

受け入れ難いのも無理はないでしょう……」


妙に多く頷きながら、そう言う相沢。


「麗眞坊っちゃま。

彩さまの弟でしたら……お分かりですよね?

普通の彩さまなら、このような状況下で何とおっしゃるか」


「姉さんなら?

『美崎……どうしちゃったんだろ……

昔の……あの頃の美崎じゃないみたい。

何かあったのね。

調べましょ、私たちで!

美崎の身に今何が起きてるのか……調べるの。

昔の美崎に戻してあげなくちゃ!』

とか言うかな」


彩お嬢様が起きていらしたらきっと……

同じような口調で同じようなことを言っていると、容易に想像がついた。


「さすが……彩お嬢様の弟さんでいらっしゃいます。

大事な想い人、椎菜さまのみを溺愛しているわけではないようで」


「まあね?
だてに姉さんの弟、やってねぇよ!」


「では、我々は少しずつ……調査を進めることに致しましょう」


まずは、情報を集めることが最優先事項だ。

彩お嬢様に美崎さまのことを話す際に、
お嬢様がパニックに陥らないように。

きちんと順序立てて説明する必要があるからだ。

「よし、やるぞ、相沢」


「では……くれぐれも……お気をつけて。

城竜二さま本人はもちろん、彩お嬢様にも知られないよう、ご注意くださいませ」


私はそれだけ言って、再び城竜二 美崎の部屋に仕掛けた盗音機に入った音声を探った。

この盗音機は、宝月家が開発した機械で、録画や録音、発振器機能までついている優れ物だ。

カクテルパーティーの最中、清掃員のフリをした宝月の使用人が仕掛けたものだ。

『最も主がリラックスするのは、自分の部屋で自分の信頼する執事と歓談をしているとき』

だということは、執事研修で習う初歩の初歩だ。


その映像のときの音声を分析した。


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