恋人という名のゲーム
1.
あゆの甘ったるい声が、電話口から響いてくる。

『美咲(みさき)おねがい! 一人足りないの。飲み会来て』

「やだよー。合コンなんてめんどくさい」

『合コンじゃなくて飲み会だってば』

「飲み会なら一人足りないとか関係ないでしょ」

あゆが押し黙った。頬をふくらますあゆの姿が容易に想像できる。


『美咲、一生のおねがい! 幹事なんだもん、あたしを助けると思って』

中学の頃から、いったい何度、一生のお願いをされただろう。いつも甘えた声で拝み倒されて、結局たのみを聞いてしまうのだ。


「…わかった」

時間と場所を聞いて、電話を切った。思わずため息をついた。あゆ以外誰も知る人がいないところで、しばらく飲んでいないお酒を飲む。気が進まない。


別に彼氏とかいらないし。だいたい、当日に誘うってありえないし。

私は憂鬱な気持ちになりながら、仕事に戻った。
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