十三日間
「今日の朝飯も、相変わらずの味だったな…改善されることはないんだろうな」
毎朝、飽きもせずにシュウはそれを言う。
俺にしてみれば、毎日飯が確実に食えるだけで、文句は特にない。
後から思えば、俺は食い物を「味わう」事を知らなかったからだろうと思う。
生きるためのエネルギー源。
食い物とはそれだけで、食うこと自体を楽しむ行為が有ること自体、想像の範疇外だったからだ。

「食えればいいんじゃないのか?」
「また、レイはそういう事を…。一度美味いものを食ってみれば180度世界が変わるぞ」
最近、俺に限ってシュウは「君」を付けなくなった。
「シュウ…おまえ、食ったことがあるのか?」
「一度だけ、偶然にな。価値観が変わったな…。逆に悪い体験だったのじゃないかと最近は思うな…」
「そうだな。出されるもの以外に食う物は無いわけだから」
「そのうち、たらふく食えるようになってみせるさ」
どんなに知識が豊富でも、一番感情が出る話題は、やはり食い物についてだった。
だが、そんな話でも、気軽に会話をするというのは、結構楽しい。
飽きもせず、毎朝似たような会話を交わしていた。

…俺と同じように、シュウも楽しんでいるのかと思いこんで。
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